どんぐりふぃーるどのお話

はじめに

このページはみんなから「どんぐり」と呼ばれる子猫のお話を思いつくままにつづっていく「消しゴムはんこ作家どんぐり」の空想の世界です。


消しゴムにゃんこ どんぐり

木の実村というところに、どんぐりの落ちる広場「どんぐりふぃーるど」があります。 そこには愉快な動物たちがいます。
物を作るのが大好きな猫はいつも何やら作っています。
羊夫婦の仕立て屋さんの近くにある大きなどんぐりハウスに住んでいます。 だからみんなは猫を「木の実村のどんぐり」と呼びます。
仕立て屋さんのおばあちゃんは編み物が得意で、 子供たちの遊び相手をするときは一緒にお茶を飲んだりおとぎ話を聞かせてくれたりします。
熊は几帳面で木を切ったり家を作ったりしています。 どんぐりふぃーるどのテーブルとイスも熊が作ってくれました。
おしゃまなリスは毛並みを気にしながらおしゃべりが絶えません、 静かになったと思ったらどんぐりを食べています。きっと大好物なんだね。
いつも仲良しのうさぎの兄弟はブランコや野ばらの庭でのかくれんぼが大好き。
ミーアキャットは誰かが何かしているといつもやってきます。
雌鶏のケッコウさんはいつも結構結構というのでそう呼ばれます。 とっても早起きで、おはようの歌を歌います。 お天気のいい日に子供たちを連れてお散歩します。 なんだか不思議なんだけど時には木の枝から遠くへ飛ぶ練習もしています。

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花の谷「ふぉーりんがるてん」

昨日の雨が嘘のように、透き通った空がまるでソーダみたい。どんぐりふぃーるどの朝日の丘を越えて木立ちを抜けるとその先の谷にはそろそろ花が咲き始める。僕らはそこを「ふぉーりんがるてん」と呼んでいる。
この時期いつも忙しくしている花の妖精たちもそろそろ谷まで来た頃かな?
花の谷を通り過ぎた所には「へむろんじーね」という湖があって、そこはね、とっても深くて冷たいんだ。きっと魚の王様が住んでるに違いない。
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「ぱくしょんばーる」

南には「ぱくしょんばーる」がある。ばーるっていうのは山のことさ。僕らは「大鳥山」といってるんだ。とっても大きな鳥が住んでるからさ。鳥の女王だ。すごくきれいな鳥なんだ。だけどね、この話をする時はみんな小さな声で話すんだ。この村へ来てすぐ何故なのか羊のおばぁちゃんに聞いたことがある。
おばぁちゃんが生まれるずっと前に2人の旅人があまりに寒くて前へ進めなくなった時、「あの大鳥がお日様をさえぎるからだ」って大きな声でしゃべっちゃったらしいんだ。そしたら「ぱくしょんばーる」が大きなくしゃみしてあたり一面に火の岩が降ったんだって。本当かどうかは知らないけど、それを試すきはないよ。だって、あの大鳥の飛ぶ姿が日に透けるとどれだけ綺麗かを誰かと話すときは小声のほうがワクワクして楽しいんだもの。

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ふるさと

その向こうに大きくそびえている山が「にゃんでばーる」女王の山「猫耳山」さ。僕はそのふもとの村「にゃんだろん」で産まれた。
小さい時は猫族が住んでるから「猫耳山」って呼んでるんだと思ってた。だけどこの村へ来てからはあの山をながめる度になるほどと思う。
「にゃんだろん」のはずれには「にゃんじーね」という湖があって、そこでは最高においしい魚がとれるんだ。母さんが「にゃんじーね」だけに住む魚だといっていた。いつかまたきっと食べたい。
そういえば、みんなは元気かなぁ・・・・・・

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妖精の詩

今日はお天気がいい。「かめっとばーる」に冒険にやってきた。
時々キラキラ光る北の山を眺めてるとどんな所なのか登ってみたい気分になったんだ。きっと竜の鱗が光っているに違いない。 あいにくみんな忙しいようでお弁当を持ってこれたのは僕だけだ。
森の中はきれいな風が歌いながら通り抜ける。 キノコの林はくしゃみが出そうなくらいくすぐったい。 中腹にある岩の口をくぐったら滝が見えた、水しぶきが霧を作ってゆっくりと流れてる。
あちこちに咲いているのは小さな黄色い花と白い花、その上をミツバチがあちらへこちらへ飛び回ってる。
大きなウツボカズラは虫を食べて生きている、小さな虫は甘い香りに誘われて花の中へ入ってしまうんだ。
切り立った岩肌にしがみ付いた蔓は今にも落ちそうにたわわに赤い実を付けている。
「かめっとばーる(Kametbahar)の妖精の詩」をおばぁちゃんが聞かせてくれたなぁ・・・

Nepenthes fairy Après l'ouverture
de la bouche est occupé à faire la médecine.
Le secret d'une bonne médecine qui en fait de mélanger le pollen.
Juste un petit peu.
ウツボカズラが口を開いたら妖精は薬作りに忙しい。
良い薬作りの秘密は花粉を混ぜること。
ほんの少しだけ。

Je veux nid dans la branches oiseau avait accumulé Vous devez attendre la fin de la fée de travail.
Il énonce longtemps que mal difficile.
鳥は(山のように)積もった(木の実の)枝で 巣作りしたいのに 妖精の仕事の終わりを待たなくちゃいけない。
呪文はひどく難しくて長い。

Les abeilles ne peuvent pas être confondus avec
la quantité de pollen.
Lorsque le pollen est trop forte,il est coincé,
Il devient trop peu et le vin.
Qui plus que dire était bonne?
ミツバチは花粉の量を間違える事が出来ない。
花粉が多すぎるとジャムになり、 少なすぎるとワインになるよ。
そのほうが良いって言ったのは誰?

山の頂上には竜が住んでるとも言ってた。
妖精には出会えそうもないが、山頂まで行ってみよう。
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恐ろしい竜

きっと翼を広げると山が隠れてしまうほど大きいに違いない、牙と爪は鋭くて、にらまれたら身動きできない程怖い顔をしてるんだ。
何百年も生きていて頭や背中はゴツゴツのトゲトゲだらけだ。その鱗は鈍いが深くキラキラとしているんだ。
竜は何を食べて生きているんだろう・・・・
頭の中をウツボカズラが通り過ぎ、にわかに恐怖と不安で冷汗が噴出した。
それでもあふれ出る好奇心には勝てないようで立ち止まるわけにはいかなかった。
だけど帰り道は真っ直ぐすっ飛んで帰れるように小枝を折っておくことは忘れなかった。

山はだんだん険しくなっていった。
普段は一日中走り回ってもへっちゃらだが、今日はそうもいかないようで、歌でも歌ってリズムを付けないと足が前へ進まない。
喉もカラカラで道々野イチゴを摘んでは食べた。 木の実も沢山実っているけど僕の手は届かない。

「どこへ行く!」
「!!!!誰だい?」
あたりを見回しても誰もいない。
振り向いて竜がいたらどうしよう・・・足がすくんで止まってしまった。
「私だよ・・・ここだよ ここ」・・・・
見ると大きくてゴツゴツとした木がこちらを見ていた。
木が話してる?
「竜に会いに行くんだ」
「ほう それで?」
「あちこちの面白い話を聞かせてもらうんだ。」
きっと物知りに違いない。
「あなたは竜に会った事はあるの?竜ってどんな姿なの?火を噴くって本当?」
「はっはっはっ!竜の事ならよ~く知っているよ、昨日もウサギの子供を100羽も食べたんだぞ、十分気を付けることだな」
「それ本当?・・・」
「ああ本当さ、ここから先は勇気のある者しか行けないんだ。」
「へっちゃらさ!」
と前へ進んだ。
やっぱり竜はいるんだ、すごいぞ。
木と話をしたのは初めてだがそんなびっくりした経験でさえ通り越していた事にかえってびっくりだ。
声が震えていた事を悟られなかっただろうか?
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ミツバチ

しばらく行くと広い谷へ出た。
一面の色とりどりの花が迎えてくれて疲れもどこかへ行ってしまった。
「何してるんだ、そんなんじゃ足りっこない」どこからか声がする。
「だって重すぎるよ、何度かに分けようよ」誰かがお喋りしてる。
「そんなことしてたら日が暮れちまう、ジョーナスの目を見たろう?あれは相当イライラしてる」 ミツバチだ・・・・
話をしてる・・・
今までミツバチが話をするなんて聞いたことがない。
花の中にうずくまってそっと様子をうかがった。
「イライラなんてしてないよ、じっと待ってるだけさ」
「大体あの呪文は何だい?サレィラはよくあれほど長い呪文を覚えたもんだ」
「先代のクオラが眠りの蕾に入っちゃったんだからサレィラがするしかないよ」
「クオラならさっさとやっちまうのに、サレィラときたら」
「仕方がないよ、初めてなんだもの、それにクオラの時も長かった」
「?何か臭わないか?・・・そこにいるのは誰だ?」

(ミツバチの会話の画像)

しまった、見つかった!
「僕だよ、邪魔する気はないんだ、通りかかっただけだよ」
「おまえ・・・野イチゴを食べたな?」
「ごめんなさい。喉がカラカラで仕方がなかったんだ」
「このまま帰すわけにはいかない、ついて来い!」
「許してあげようよ、すぐに元に戻るよ」
「うるさい黙れ!掟だ!連れていく。逃げようとすれば針の一撃だぞ!」
ミツバチに凄まれたって平気だけどいったいどこへ行くんだろう?
「これはどうするのさ?一度には持ちきれない」 ミツバチは花粉を集めてどこかへ運ぶ途中らしい。
「良ければ僕が持つよ、君たちより沢山持てるからね」
「じゃぁそうしよう!みんな丸く納まる」
「何が丸くだ!能天気なドット。この忙しい時にこんなちび猫拾っちまって!」
「ちびじゃないぞ!」
僕はムッとした。ミツバチにちびと言われたんだ。
「サレィラがどうにかしてくれるよ、さぁ行こう!」
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ビートとドット

たわいのないお喋りを続けるミツバチに僕は花粉をこぼさないように慎重について行った。
「あのくそ長い厄介な呪文はいつ終わるんだ?お陰でみんなイライラしてる!」
「イライラしてるのはビート、君だけさ」
「チビにしたってなんで野イチゴなんか食ったんだ?他に美味しそうな山桃やブドウだってあったのに」
「木に登って採れっていうのかい?」
「やっぱりチビじゃないか」
ビートの言葉に肩に止まっていたドットがクスリと笑った。
「ビート、君より僕が大きいよ?それに僕にはちゃんと名前があるんだ」
「チビよ、俺らは高い場所だって平気さ、飛べるからな。大きいからって偉そうにするなよ」
「偉そうになんかしてないよ、だからチビじゃない!どんぐりだ!」
「どんぐり?猫なのに?」
「みんながそう呼んでる」
「へぇ・・・チンケ」
「ビートは口は悪いけどいい奴なんだよ、面倒見もいい」
「ドットはお喋りだ」
ドットと僕は思わず顔を見合わせて苦笑した。
石につまずいてうっかり花粉を投げ出しそうになった時には
「しっかりしてくれよ、花粉だけはこぼすんじゃないぞ、 これだから飛べない足着きは頼りにならん!体ばかりでかくて運動神経はまるで無い!」とか、
「昔はみんなこの辺に住んでたのにいつの間にか里のほうへ行っちまって、言葉すら分からなくなっちまった」 とか・・・
やっぱりお喋りなのはビートの方だ・・・
「そういえばどうして君たちの話す言葉がわかるんだろう?」
「野イチゴを食べたからさ。ウツボカズラの薬を飲めば帰るころには里の言葉が分かるようになる。
ほおっておいても里に帰れば元に戻るんだけど、数年はかかる。 そうなると今度はこっちの言葉は分からなくなる。妖精の姿も見えなくなるんだ。」
「野イチゴ?
僕はてっきり君たちの食べる野イチゴを僕が食べちゃったから怒ってるんだと思ってたよ。」
ドットが笑いながら話を続けた。
「今、サレィラがウツボカズラの薬を作ってる。この花粉はそのために運んでるんだ。
以前はクオラが作っていたんだけど、眠りの蕾に入ってしまってからずいぶん経つんだ。
薬の残りもわずかになって仕方なくまだ若いサレィラがうろ覚えの呪文をかけてる。
さあ、着いたよ!あの木立の向こうがウツボカズラの崖だ。」
ドットにうながされて木立を抜けると、そこは少し開けた場所で端は崖になっている。大きな木が幾つか立っていて、その足元には数年に一度咲くというウツボカズラが大きく口を開けていた。

(ウツボカズラの画像)

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サレィラ

崖は山の南側に切り立っていた。近づくと遥か下の方に木の実村が見えた。 恐る恐る崖を覗くと何かキラキラと光っている。 「どんぐり、ここに花粉を置いてくれないか」 ビートだ。
「あのキラキラ光っているのは何?」
「ああ、妖精たちが崖の赤い実を集めてる」
「未熟な妖精たちがサレィラを手伝ってるんだ。ほら、力を使うときに髪がのびてこないだろう?まだ未熟な証拠さ」
そうか、山にキラキラして見えたのは妖精たちの羽だったんだ。

(妖精たちの画像)

その時、後ろの方でボトンッと音がした。
振り向くとウツボカズラがお腹の当りをデコボコさせて動いていた。
「ビート、ドットはどこだい?」
「ドットならサレィラの様子を見てる」
僕はホッとした。まさかドットがウツボカズラの中へ落ちてしまったのではと思ったからだ。 「サレィラが居るの?」
「ああ、木の上にいる」
恐る恐るウツボカズラに近寄って、そこに立っている木の上を見た。 妖精がブツブツ言いながら赤い実をウツボカズラの口めがけて落としている。

(サレィラの画像)

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